『林業の分野から樹木医の世界へ 』
片岡淳也(第3206号 樹木医) 令和5年度合格 | |
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私は地元が森林の多い地域で林業が身近だった事もあり、この業界にはいりました。林業に就いた最初は、先輩について山の中を歩き回って調査をする日々が続きました。その中で、森林の仕組みや林業が行われる事の大切さを学びました。その後、森を育てる作業や木を山から出してくる作業など様々な事に携わりました。そして、忙しく日々の現場をこなして十年あまりが経った頃、今までの自分の作業についてふと考える瞬間が訪れました。林業では人が植えた木が主役的な要素が強く、スギやヒノキ以外はほとんどの場合、ザツ木扱いになります。そのような事も影響して木を切る現場では、人が植えた木以外の木は邪魔者扱いされ、いとも簡単に切られてしまいます。作業上の邪魔になる物以外も何となくで切られます。自分もそういうふうに作業をしていました。しかし、人が植えた木も、自然に発芽して根付いた木も樹木であるという事に変わりはないし、むやみやたらと切るのはどうなのかと考える様になりました。そして、木を切る事は必要最小限にとどめて切らなくてもよい物は切らないように作業するようになりました。その頃から、人が植えたスギ、ヒノキ以外の樹木についても知りたいと思うようになり、樹木図鑑や樹木の本を読むようになりました。そして、その中で樹木医という資格がある事を知りました。しかし、この時は樹木医の資格を取得しようとまでは考えていませんでした。 樹木についての本などを相当数読み、それなりに樹木に対する知識がついてきたころに、ある仕事がはいってきました。町からの依頼で県道沿いに植えられている街路樹の剪定をして欲しいとの事でした。施工は予定をずらす事ができず、適期といえる時期ではない頃に行いました。そして、枯れない程度に思いっきり切って欲しいと言う要望に無茶があるなとは思いつつも上手く説明できず、かなりの強剪定になってしまいました。案の定、剪定した中の6本の木が夏を越せずに枯れてしまいました。それを見て自分にもっと依頼主に対して、ちゃんと説明できる知識と裏付けがあればなという悔しさが湧いてきました。この時、本気で樹木医になろうと決心しました。 本気で樹木医を目指した段階で選抜試験まで1年ありました。まずは、過去に購入して全く読む気になれなかった、最新・樹木医の手引き改訂4版をひたすら読みました。最初は、書いてある内容が難しすぎて中々頭に入りませんでしたが、読み直し3回目には大体の事が理解できるようになってきました。その頃から過去10年分の試験問題集を購入し、1日に1年分をと決めて解いては解説を読む事を繰り返しました。過去問を解くのも最初のうちはものすごく時間がかかりましたが、数をこなしているうちに問題に慣れて早く解けるようになりました。上手く表現できないですが、とにかく反復しているうちに頭に知識が入ってきたかんじです。その他にも論述問題の為に広く知識をつけたかったので、樹木関係にこだわらず色々なジャンルの本を読みました。例えば気象関係、昆虫関係、環境問題、日本の歴史、世界の歴史などです。これらの物を読んで何がどう樹木と結びつくかを常に考えながら日々を過ごしました。そうする事で最初は苦手だった論述問題に対する抵抗感もほぼなくなりました。受けるからには絶対に合格したかったので自分なりにやれる事は全てやったつもりです。これで合格できなければ自分には無理だから次の受験はしないと決めて選抜試験をむかえました。その結果、なんとか合格する事ができました。そして、本番である茨城県つくば市での研修も無事終え、全16科目全て合格で無事に樹木医になる事ができました。本当に大変だったつくば市で共に研修を受けたメンバーは、これから先もずっとつながっていく同志だと思っております。 目標だった樹木医の資格は取得できましたが、本当に大変なのはこれからだと思います。自分の今の知識と実力ではまだまだ力不足です。日々勉強を続けて支部の先輩樹木医の方々からたくさんの事を学び、早く一人前の樹木医と認めてもらえるよう全力で頑張っていこうと心に決めています。 樹木を通じてたくさんの方々との関わりが増え、自分の人生もだんだんと豊かになっていく事を楽しみにこれからも前を向いて進んでいこうと思います。 |