合格者体験記

『他業種から樹木医への歩み』

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鈴木孝明(第3032号 樹木医) 令和3年度合格
 私はこれまで紙面広告やホームページ制作のようなパソコンを使ったデザインの仕事をしてきました。子どもの頃から生き物は好きでしたが、樹木には何の縁もありませんでした。しかし、年々悪化する自然環境や動植物の生息・分布域や野生動物の生息数の減少には心を痛めていました。そのようななか、特技であるパソコンの専門技術を活かし自分にも出来ることが無いかと考え、10年前に「2級ビオトープ計画管理士」を取得しました。しかし、現場での実務経験が無く、知識だけあっても何も出来ないことに気づきました。「生態系の根源は植物である」との思いに至り、樹木のスペシャリストである『樹木医』を志すことを決意しました。
 その頃、津市内で植木生産を行う農業法人の社員募集があり、実務経験に基づく樹木に関する知見を深めようと思い転職しました。この法人ではネット販売を含む植木の直売所を任され、接客や在庫の圃場管理を行なっていました。しかし、接客をする上で樹木のことを何も知らない自分に気づき、お客様から相談を受けても根拠のあるアドバイスが出来ない歯がゆさを感じていました。さらに、来店される一般の方だけではなく、造園業の方でも樹木の知識が無い方もみえることに気づきました。
 そのような日々を送りながら疑問に思うことを勉強し、圃場で実践し、同僚と意見交換をしながら試行錯誤を繰り返しました。樹木医の応募要件である実務経験の7年が経過した頃、津市内の松保護士さんから樹木医を目指していた頃にまとめた「勉強ノート」を受け継ぐ機会を得て、本格的な受験勉強をスタートさせました。もともと生物学・生態学の基礎知識はあったのですが、高校生物の参考書で基礎から学び直し、最新樹木医の手引きと過去問集を教材にして猛勉強に励みました。その甲斐あって1度目の受験で合格通知が届き正直なところ驚きました。集合研修はコロナ禍でもあり、同期との交流時間は限られたものでしたが、今でもネットや研修を通じて交流を深めています。
 お恥ずかしいことに、これまで文化財には全く関心がなく、樹木医の仕事をかなり誤解していました。講義や研修を通じて天然記念物・文化的景観などの歴史的背景や地域住民との関わり、大切に保護している方々の思いを知り、「後世に残す」「受け継ぐ」ことの重要性に気づきました。そして、樹木医を取得したことにより先輩樹木医や同期との「つながり」が出来ました。このつながりの大切さを、今実感しております。
 今後は先輩樹木医に同行させていただきながら、自己研鑽を重ね責任ある樹木医として活動していきたいと思っています。まだ実地経験がほとんどありませんので、当面は広い視野で知見を広め、特技でもあるパソコンを使って樹木医のお仕事に貢献出来ればと考えています。

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